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株式会社三菱地所設計 建築設計二部 副主事

古寺浩実さん

―コンセプトを具現化するにあたって工夫した点はどこですか?

 

「Commons for Communication」というコンセプトを形にするため、新6号館のいろいろな場所にカフェやラウンジなど、人が滞在でき、交流が生まれるような場所を設けました。

 

また、知らない人とも話しやすく、1人でも、グループでも楽しめる空間にするという点を意識しています。

 

―新6号館の設計で特にこだわったところは?

 

新6号館には、人の視線を通りやすくする工夫が随所にしてあります。

 

というのも、たとえばガラス越しに外を歩いている友達を見つけてサインを送ることもコミュニケーションの1つだと思うからです。エレベーターや階段は外からも中からもお互いの存在を確認できるようガラス張りになっています。また3階より上の階のラウンジはガラス張りの外観になっているため、中庭広場でくつろぐ友人とサインを送りあってコミュニケーションをとるといったことも可能です。

 

3階にある大教室の廊下側の間仕切りはガラス張りになっているので、教室の外から中の学生の様子が見える点もこだわりの1つです。さらに、間仕切りは動かせるようになっていて、開け放てば廊下やラウンジと一体化したスペースとしても利用可能です。この開放的な空間を様々な学びに使えるよう、椅子、机も可動式のものにしています。

 

このように、メディアが発達していて顔を合わせなくてもコミュニケーションができてしまう現代だからこそ、お互いの顔が見えるコミュニケーションを発生させる仕掛けを、新6号館には意識的に盛り込んでいます。

 

―外観のデザインにも工夫やこだわりはありますか?

 

新6号館は、本館と図書館の間にある建物なので、下手をすると見慣れたキャンパスの景観を壊してしまう可能性もあります。そこで、伝統ある本館とデザイン性の高い図書館の間にあって、新6号館があまり存在感を主張しすぎないよう設計に工夫をこらしました。具体的には、正門側に面した南側の窓にルーバーを使って建物の存在感を抑えている点などです。

 

一方、中庭側から見ると新6号館はガラス張りになっています。透明感を高くすることで、建物内でおこなわれている学生の活動や様々な交流が外から見えるようにし、まるで建物内の交流が、外にまであふれでてくるような印象を生み出す、そんなデザインを目指しました。

 

             

―設計の過程で、苦労したことや困難だったことがあれば教えてください。 

 

新6号館には教室の他にも事務室や会議室など、さまざまな機能があります。それぞれの機能についていろいろな要望が委員会から寄せられましたので、それらをどのように高いレベルでバランスさせるかに一番苦心しました。他にも、「周りが既存の建物で取り囲まれている中で周囲と調和させるためには外観をどうデザインしたらよいか」、「他の建物との接続をどうするか」といった問題を解決するために試行錯誤を繰り返し、ようやく今の形にたどり着きました。これが設計のおもしろさであり、また、ときに相反することもある利用者の要望に対して納得していただけるプランを考えることが、設計者の腕の見せ所でもあります。

 

―新6号館は環境にも配慮しているという話ですが・・・・・・。

 

1つ目は、建物西側けやきラウンジの窓ガラスに散水をし、西日熱負荷の軽減ができるようになっています。また、水がゆらゆら流れるのを見ることによって視覚的にリラックスできる効果も期待できます。

 

2つ目は、太陽光集熱の利用です。この熱を地下のカフェ、厨房での給湯用熱源として利用しようと思っています。

 

さらに、館内では基本的にすべてLED照明を利用します。また地下に通っている管の中の、一年を通してあまり温度変化のない地中埋設管の空気を建物内に導いて空調を補完するなど、様々なところに最新の省エネ技術が使われています。

 

―学生へのメッセージはありますか?

 

大学時代は人生の中でもいろいろな人や、興味がもてることに巡り合える時期だと思います。その大学生活の中で、新6号館により新たに生まれるスペースを友達との会話に、そして時には1人でゆっくりすることに使ってもらえたらと思っています。

 

「学生の時、あんな景色を見た、あんなことをしたな」。そういう大学時代の思い出の一部として、新6号館で過ごす時間が皆さんの記憶に刻まれてくれたらと願っています。

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